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体制の発展か崩壊か、貨幣をおとしめるたくらみ

2010/03/15 18:37

 

 古代ローマ帝国は金・銀貨の悪鋳を重ね、中世モンゴル帝国は紙幣を乱発した揚げ句に滅んだ。だが、貨幣の乱用で興隆するときもある。

17世紀末、英国は現在の中央銀行であるイングランド銀行を設立、金銀と兌換(だかん)できない銀行券を大量発行させて軍費を調達し、フランスなどとの戦争を勝ち抜き大英帝国の基礎を築いた。

現代の覇権国米国は未曾有の金融危機を引き起こしたがドル資金を通常の2倍も創出してみせた。中国は銀行に人民元資金を前年比で3倍も融資させ、内需の拡大に成功した。

対照的に円資金の発行を増やさない生真面目な日本はデフレ悪化に苦しみ、通貨規律の順守を義務づけられる欧州のユーロ加盟国の危機は深まるばかりだ。貨幣のいたずらである。

北朝鮮は昨年11月、デノミ(通貨の呼称単位の変更)により北朝鮮ウォンの単位を100分の1にした。新札への切り替えは1世帯当たり旧札で10万ウォン(日本円換算約3千円)が上限という条件付きだ。これにより市民がヤミ市場で稼ぎ、タンスに隠していた「非合法マネー」を召し上げる。一方で銀行預金の新通貨切り替えレートを10分の1に優遇した。工場労働者は旧通貨表示と同じ額の給与をもらえる。つまり、労働者の賃金は一挙に100倍に引き上がった。

≪外貨資産は一挙に70倍≫

労働者優遇、自由市場抑圧という社会主義の「原点」に回帰する荒業なのか。そんな建前など、かの将軍様こと、金正日総書記だって信じてはいないだろう。

北朝鮮デノミに乗じてウォンを70分の1に切り下げた。金正日総書記を頂点とする首領経済の既得権益集団は一挙に外貨資産をウォン換算で70倍にした。

北朝鮮で金やタングステン、ウランなど希少金属を含む鉱物資源が豊富なことは、戦前に朝鮮総督府による地質調査が証明している。この資源を支配してきたのが首領企業集団である。

金など鉱物価格は、金融危機のおかげで急騰している。グラフは、2008年10月の「リーマン・ショック」前後の米住宅価格(米S&P社のケース・アンド・シラー主要都市住宅価格指数)とロンドン金(きん)市場価格および米連邦準備制度理事会FRB)のドル資金供給残高の推移を比較している。

金価格は平時でもドル不安のときに上昇するが、金融危機後はドル札が乱発、垂れ流されるに及んで急騰するようになった。金価格と石油など他の鉱物資源価格は連動する。米国は住宅価格が回復しない限り、ドル札を発行しては住宅市場を支えるしかない。景気が好転すれば実際の需要増も見込める。従って、金など国際商品市場相場は今後も上昇基調が続くはずだ。

首領企業にとって金融危機はまさに千載一遇のもうけのチャンスなのである。ところが、道路や発電所などインフラは日本による統治時代のままで、老朽化しており、自分の手では資源開発できない。

これまでは鉄鉱石や石炭の鉱山利権を中国企業に譲渡し、これら産物の対中輸出と引き換えに石油や一般商品を中国から輸入してきた。しかし、本格的に開発するためには欧米資本の導入が必要だ。そのほうが政治的に避けたい対中依存一辺倒から抜け出られる。

≪外資を誘い込む餌≫

欧米では金融危機後、北朝鮮の鉱物資源への関心は高まっている。ロンドンなどを舞台にした投資ファンドも動き出した。ただ、国連による北朝鮮制裁などに伴う投資リスクもあり、投資家の多くが二の足を踏んでいる。

ウォンの大幅切り下げはこうした外資を誘い込む餌になる。現地投資コストが縮小し、リスクを吹き飛ばすほどの投資収益が見込めるからだ。首領企業は、産物の輸出により莫大(ばくだい)な外貨収益を海外の秘密口座にため込む魂胆だろう。

歴史的にみれば、貨幣をおとしめるたくらみは賭けでもある。成否は体制の発展か崩壊かを決める。今回はどちらに転ぶか。
【日曜経済講座】編集委員・田村秀男 北朝鮮デノミの真相 体制延命を図る賭け
2010年03月14日 産経新聞 東京朝刊 オピニオン面から

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デノミ 真の狙いは首領体制再強化

2010/03/08 18:13

 

SANKEI EXPRESS 3/7, 2010

国際政治経済学入門第119回から

  北朝鮮は昨年11月にデノミ(通貨の呼称単位の変更)に踏み切ったあと大混乱が続いている。なぜ経済基盤の脆弱な北朝鮮があえてデノミに踏み切ったのだろうか。金正日総書記は未曾有の金融危機が国際的な貨幣の洪水を引き起こしている今こそが首領独裁体制強化へと舵を切る千載一遇のチャンスととらえたからである。StartFragment

 北朝鮮デノミは矛盾だらけだ。単位を100分の1にした新ウォン札を旧札に切り替える。食料品など物価の表示も一律に100分の1にすべきなのだが、あれほど強圧的な当局にやる気がない。新札への切り替えは一世帯当たり旧札で10万ウォン(日本円換算約3000円)を上限にしている。北朝鮮の世帯当たり平均生活費は4万~5万ウォン。つまり2カ月分の生活費を超える分は国家が召し上げるわけである。案の定、市民の不満が爆発しそうになり、当局はあわてて銀行預金の新通貨切り替えレートを10分の1に優遇するなどと修正した。さらに、工場労働者は旧通貨表示と同じ数字の給与をもらえるという。つまり労働者の賃金を一挙に100倍引き上げる。闇市場で稼ぐ「新富裕層」からはタンス預金を召し上げる。

 こうみると、デノミは労働者・農民優遇、金持ち弾圧という社会主義の「原点」に回帰する荒技とも読み取れるが、建前などだれが信じようか。

 外部では余り注目されなかったのは、新ウォンと人民元やドルとの交換レートである。1月初旬、北朝鮮の貿易決済銀行である朝鮮貿易銀行は1ドル96.9新ウォンという新交換レートを設定したと中国紙に報じられた。旧レートでは1ドル約140ウォンだったので、100分の1なら1.4新ウォンにすべきなのだから、実質的にはほぼ70分の1に切り下げる計算になる。外貨保有者は一挙に資産をウォン換算で倍増やしたことになる。露店で商う零細業者のしわくちゃのドル札なんてしょせん取るに足りない。大量の外貨を保有するのは金正日を頂点とする首領経済に巣くう特権階層である。かれらこそが最大の受益者である。

 日本の統治時代の道路、発電、輸送、水道などのインフラや鉱山設備が老朽化している北朝鮮が経済開発を進めるためには、輸出により外貨を稼いで新鋭設備を導入する必要がある。これまでは中国企業に鉱山利権を渡して開発してもらい、資源の対中輸出と引き換えに中国製品を輸入してきた。しかし、平壌ではこのままでは中国に国内資源を抑えられるとの警戒感も強い。そこで、通貨の大幅な切り下げにより中国以外への輸出を強化し、脱中国依存を図る。そのためには、欧米資本の導入を推進する必要がある。

 北朝鮮は金や各種非鉄金属など鉱物資源国である。金融危機のおかげでその埋蔵資源の価値が急騰している。グラフは、2008年9月の「リーマン・ショック」前後の米住宅価格(米S&P社のケース・アンド・シラー主要都市住宅価格指数)とロンドン金(きん)市場価格及び米連邦準備制度理事会FRB)のドル資金供給残高の推移を比較している。金価格はドル不安のときに上昇するが、金融危機後はドル札が平時の2~3倍に発行されるに及んで急騰するようになった。この金価格と石油、鉄、亜鉛など他の鉱物資源価格は連動する。米国は住宅価格が回復しない限り、ドル札を発行しては住宅市場を支えるしかない。垂れ流されるドルはこれからも悪戯を続け金など国際商品市場相場を押し上げる。欧米の投資ファンドは北朝鮮の鉱物資源に投資しようと意気込んでいる。

 金正日総書記を頂点とする首領経済体制と呼ばれる北朝鮮の企業集団は同国の資源を独占している。金正日は自国の資源を欧米に高く売りつける絶好のタイミングを得た。貿易により莫大な外貨収益を海外の秘密口座にため込むことができる。

 デノミと称してウォン単位を二ケタずらした本当の狙いは、首領経済体制の再強化とそれによる金正日自身の「強盛」である。デノミ政策の「失敗」の責任は担当者にとらせばよい。とにかく小手先の対応でも民衆の不満の矛先をかわす。その裏で将軍様がせせら笑う。EndFragment

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FRBは住宅バブルの倉庫 「出口」のない米金融政策

2010/02/28 14:34

 

 FRBは住宅バブルの倉庫 「出口」のない米金融政策

産経新聞2010年2月28日付け朝刊

 ◆政治家もメディアも「大人」
扇動的な「トヨタ車」問題と違い、基軸通貨ドルの命運がかかる金融政策については、米国の政治家もメディアもさすがに「大人」である。世界からの借金で成り立っている米国の金融というものは壮大な虚構だが、つぶすわけにいかないのだ。
連邦準備制度理事会FRB)が公定歩合を年0・5%から0・75%に引き上げた発表(2月19日)を例にとろう。公定歩合というのは、中央銀行による金融機関への貸し出し金利である。その利上げは一昔前なら「米、金融引き締めに転換」と大きく報じられただろう。ところが、経済紙の米ウォールストリート・ジャーナルをはじめ、主要メディアはバーナンキFRB議長らの「これはあくまでも細かい技術的な金利変更だ」という説明をそのまま報じた。
実は公定歩合貸しは、依然としてFRBの「伝家の宝刀」である。いざというときに抜いては周りをシーンとさせ、元のさやにおさめるときには平時に戻ったと宣言する。
2008年9月の「リーマン・ショック」勃発(ぼっぱつ)後、FRBは公定歩合による金融機関への緊急貸し出しを中心に1兆ドルの資金を発行した。今回の公定歩合引き上げで、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標(0~0・25%)との差を広げると、金融機関はFRBからの借入金を返済する。FRBの帳簿から公定歩合貸しが一掃される。
バーナンキ議長は24日の議会公聴会で危機対策からの「出口戦略」を強調し、公定歩合引き上げはその一環だと説明した。バーナンキ発言に対し、米議員やメディアから、同日に開かれたトヨタ車問題に関する公聴会での豊田章男社長の証言に対するような、ささくれ立ったコメントは一切聞かれなかった。米国金融は正常化の道筋をたどっている、安心せよ、というシナリオに議会も市場もメディアも乗っているわけだ。
◆住宅価格も「二番底」探る
が、米消費者がトヨタ車の一大ユーザーならば、日本の預金者は米金融の要である米国債の世界最大のスポンサーである。われわれが米金融政策を厳しくチェックするのは当然である。
調べてみると、FRBは住宅バブルの倉庫になっている。FRBは通常、ドル札を発行して金融市場から国債など優良資産を買い取り、その資金で金融市場を円滑にするのだが、グラフにある通り、2月中旬の総資産のうち45%を住宅抵当証券(MBS)が占めている。
 米政府系の住宅金融公社などが金融機関の住宅ローン債権を買い取り、証券にしたものがMBSである。MBSの価値は住宅価格次第で決まる。住宅市況が悪化すると、MBSの利回りと住宅ローン金利が急上昇し、住宅不況が深刻化するという悪循環が生じる。そこでFRBはドルを刷っては問題資産のMBSを買い取り、住宅ローン金利を低めに安定させる市場操作を強化してきた。にもかかわらず、米住宅需要は減少が続き、09年春に下げ止まった住宅価格もここにきて「二番底」に陥りそうな情勢だ。
◆ドルと円は運命共同体
FRBが市場介入をやめると、MBSと住宅価格は再び暴落して証券化商品全体に波及し、信用恐慌再発に発展しかねない。住宅市況が改善しない限り、FRBはドル札を刷ってはバブル化したMBSを引き取るしかない。
他方、これ以上ドル札を垂れ流し続けると、ドル自体がバブル化する。余剰資金が原油や金(きん)などに流れ込んで商品相場を高騰させたり、ドル暴落不安が再燃する恐れがある。窮地に立つバーナンキ議長はバブル発生装置になり下がったFRBに出口はないのに、公定歩合引き上げを機に金融危機管理体制からの出口戦略に入ったと演技せざるをえないのだ。
日本としてはどうすべきなのだろうか。これ以上、われわれがためた虎の子の預金をドルのリスクにさらすわけにはいかないが、ドルと円は運命共同体。最後の選択肢として、日銀が円札を刷ってドルや米国債を買い支えるしかない。鳩山政権と日銀はそのくらいは備えておくべきだ。(編集委員・田村秀男)

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台頭する人民元と「国際通貨」円の没落

2010/02/22 14:18

 

 【国際政治経済学入門】台頭する人民元と「国際通貨」円の没落

12:31
 ■国際化可能な人民元
 
 「国際通貨円」の没落ぶりが激しい。しかも、日本の通貨当局が惰眠をむさぼるありさまでは中国がアジアから日本円を駆逐する日が近くなる。
 
 教科書流に「国際通貨」を定義すれば、まずその通貨が国際的なビジネスの決済手段であることだ。その条件は、その通貨建ての証券など金融資産をその通貨の国民並みに外国人が自由に売り買いできることだ。貿易や金融取引では比較的巨額の単位の資金が動く。これらの資金を金融市場で運用しつつ、金融機関を通じて決済する必要があるからだ。
 
 中国の場合、厳しい資本出入規制を敷いており、外国人による人民元の金融資産取引には大きな制約がある。資本取引を自由化しない限り、人民元は国際化しないと財務官僚などはタカをくくるわけである。
 
 ところが、中国はまるで意に介さない。ことしから東南アジアを中心に人民元建ての貿易決済を一挙に広めようと、大手の国有商業銀行を各国に進出させている。
 
 なぜ人民元国際化は可能か。東南アジアは中国と地続きであるばかりではない。タイ、シンガポールインドネシア、マレーシアなど主要国の国内総生産GDP)の7割前後は華僑・華人系が掌握している。出身地の福建省、広東省の言葉が華僑・華人社会の共通語であり、文化的にも中国南部と一体化している。そこに共通の通貨がとして浸透する基盤がある。
 
 中国の金融資産市場にアクセスできないから、人民元が東南アジアの共通決済通貨にならない、というのも誤解である。東南アジアと中国大陸を仲介する自由な国際金融市場、香港があるからだ。香港には古くから華僑・華人系資本が進出し、香港を拠点にして対中投資してきた。香港と上海の金融ネットワークも充実しつつあり、香港経由で上海株式市場や不動産市場で売り買いしている。
 
 華僑・華人なら中国での資産取引による収益も香港経由で外部に送金できるのが、この中華経済圏である。
 
 おまけに、北京の党指導部は、人民元をドルにくぎ付け(ペッグ)している。国際基軸通貨に対して安定した相場で人民元建てのビジネス決済が可能なのだから、人民元の使い勝手はドルに対して変動の激しい日本円よりもはるかによい。
 
 ■円建て融資率は急落
 
 翻って、「国際通貨」と呼ばれている日本円はどうなっているのか。国際通貨なら世界各国の通貨当局が準備通貨として保有するのだが、国際通貨基金IMF)統計によれば、世界の公的準備に占めるシェアはじわじわと下がり続け、2009年9月末にはわずか3.2%と、10年間で半減した。金融危機で巨大な損失を被った英国のポンドを下回る。
 公的準備とは比較にならないほど、通貨の国際的地位を大きく左右するのは民間主体の国際金融である。日銀が国際決済銀行(BIS)の統計から抽出した日本の金融機関の通貨別対外融資残高(債権)動向をみると、恐るべきことに円建て融資の比率は1990年代半ばの60%台から急落を続け、2009年9月末には24%台へと落ち込んだ。この間、大手銀行など日本の金融機関の対外融資総額そのものは急増を続け、2倍以上に達している。
 
 円の国際化を担うはずの日本の金融機関は自前の武器である円で勝負せずに、ドル、さらに一部はユーロで資金調達し、融資している。裏返すと、国際的に円に対する人気がない。日本企業の円建て貿易決済比率も09年後半で輸出39.5%、輸入24.2%という低水準ぶりである。
 
 自前の通貨で国際ビジネスを展開できない国の企業は、為替差損のリスクを被り、莫大(ばくだい)な為替手数料負担を強いられ、収益率も下がる。何よりも経済の言語とも言うべき通貨で他国に依存するなら、アウェーでプレーする選手以上に大きなハンデを背負う。国富も失う。危機認識の欠如が日本円を自滅に導く。
 (特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)
 

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中国色に染まったマンハッタンの象徴

2010/02/16 12:10

 

 日米欧悩ます人民元パワー 中国の逆鱗に触れぬよう…

08:39

 【経済が告げる】
中国の春節(旧正月)休みの2月15日。ニューヨークの高級デパート「メイシー」は100年前の開業以来初めて、売り場を赤地の「福」のカードで飾り、騒がしい銅鑼に合わせて狂喜する黄金の獅子を2度もわせた。上海からやってきた千人もの中国人買い物客一行を歓迎するためだ。
翌日の夕闇迫るころには、エンパイヤ・ステート・ビルがご一行様用に貸し切られる。歓声の中、中国の総領事が点灯ボタンを押すとビルは赤と黄色の照明に包まれる手はずだ。

新華社ネットが以下の写真を2月17日に流したのだから、上記は確認されたと考えてよいだろうーー筆者追加

http://news.wenxuecity.com/messages/201002/news-gb2312-1019549.html)
折しも、台湾への武器売却やダライ・ラマの訪米などを機に米中関係は冷却化している。だがマンハッタンの象徴を中国色に染めても、構わない。この団体が落とすカネはざっと3千万ドルになるとの皮算用もある。急増する中国のお金持ちを取り込む絶好の機会なのだ。
中国人の財力をそこまで高めたのは、2008年9月の「リーマン・ショック」であり、ドル基軸の国際通貨体制である。
中国共産党の胡錦濤指導部は金融危機後ただちに、人民元を安くなるドルにペッグ(くぎ付け)し、輸出競争力強化を図った。さらに、輸出代金や投機目的で入ってくる巨額のドルを買い上げては人民元を刷って国有商業銀行に流し込む。党中央は国有商業銀行の国有企業向け融資を一挙に3倍に増やすよう指令した。国有商業銀行自体、証券投資ファンドと化した。国有企業はあふれる融資マネーを生産ではなく株式や不動産市場につぎ込むのだから、株式相場は一挙に上昇気流に乗った。
金(きん)の裏付けのない現代のマネーを構成するのは紙幣や硬貨、銀行預金ばかりではない。いつでも現金と交換できる株式など金融商品はマネー同然だ。企業が株式を新規発行または増資し、株価が上昇すれば、マネーもまた膨張することになる。
上海株価は08年10月に底を打ち、09年末までには党が目標とした平均株価指数3000台まで戻した。上海証券市場の時価総額は09年末には22兆1300億元(約300兆円)まで回復し、1年間で10兆元(約135兆円)増えた。まるで打ち出の小づちのように、中国は党指導部の一振りで巨万の富を創出したのだ。
マンションを中心に不動産市況も好転し、上海、北京などの中間層や富裕層のフトコロは潤ってきた。上海などで新車は飛ぶように売れる。この勢いでお金持ちがニューヨークにまで買い物に押し寄せる。そんな中国が今後とも、頼りになるだろうか。すでに中国国内でも株や不動産バブルの懸念が強い。上海株が暴落すれば、世界に飛び火しかねない。
ワシントンの内部情報によれば、今月5日、ガイトナー財務長官は中国の王岐山副首相に電話し、人民元の切り上げを求めたという。でないとオバマ政権は中国を「為替操縦国」と認定して制裁するよう、4月中旬に米議会に通告すると警告した。これに対し、王氏は強く反発し、米国債購入中止を示唆したという。米国としては中国の人民元パワー増長を抑えたいが、米国債市場の波乱は怖い。人民元切り上げ要求に同調する日本も欧州も同じ思いだ。
そのあとカナダで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、次回以降G7を非公式会合にすることで一致した。日米欧は「マネー大国」中国の逆鱗(げきりん)に触れないようこっそり話し合う。そして、中国が世界の市場の波乱要因にならないよう、誘導したいのだ。(編集委員 田村秀男)

 

 

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党指令の上海が世界の株価を先導する

2010/02/15 08:43

 

 

【経済講座】編集委員・田村秀男 党指令次第の上海市場

2010.2.14 07:05

 ■世界株式の波乱要因に

 上海株価がニューヨーク株式市場を先導するケースが目立ち始めた。未曾有の金融危機からようやく立ち直り始めた世界の株式市場は、共産党中央の指令下にある上海市場に振り回されるのだろうか。

 ≪2カ月後はNY株に重なる≫

 上海株価とニューヨーク・ダウ工業平均株価を比較してみればよい。中国を除くブラジルロシアなど新興国の株価はニューヨークの相場に連動するのだが、上海だけは別だ。上海株価のグラフを2カ月後ろにずらすと、ニューヨーク株の動向に重なってくる。

 2007年2月下旬、上海株急落がきっかけになってニューヨーク、東京をはじめ世界中の株価が急落した。上海株価は同年10月に崩落が始まり、世界がひきずられた。08年9月にはリーマン・ショックが起きたが、上海株はその直後、反転し始めた。ニューヨーク株価が底を打ったのは上海の2カ月後である。

 世界の株式市場を犬の体に例えると、ニューヨークは頭であり、上海はしっぽのはずだった。しかし、いつの間にか、しっぽが頭を振り回している。

 なぜそうなったのか。理由の一つは、中国へのホットマネーの流出入規模の巨大化である。中国社会科学院の試算によれば、07年末に中国に流入していた投機資金は1兆7500億ドルで、当時の外貨準備と同水準、中国GDP国内総生産)の53%に上った。これが逃げ出して上海株急落を引き起こし、舞い戻ると相場が回復する。このホットマネーの正体はほかならない、中国の国有企業の香港やカリブ海の租税回避地(タックス・ヘイブン)の出先という説が有力だ。国有企業は、北京の株価政策や為替対策に応じて上海で売り買いする。

 ≪国有商銀に積極融資命令≫

 より決定的な要因は、共産党指令による株価対策である。中国の株式バブル崩壊は、07年10月中旬の全国党大会終了直後から始まった。その下降スパイラルの最中の08年9月にリーマン・ショックが起きると、胡錦濤総書記・国家主席は国有商業銀行による国有企業向けを中心とした積極融資を命令した。

 09年1月の国有商業銀行新規融資は8兆元(約105兆円)に上り、融資残高は1年前の2・8倍に膨れ上がった。以来、融資残高は09年を通じて前年比3倍前後で推移し、12月末は17兆3千億元(約235兆円)という大盤振る舞いである。

 銀行がこぞって3倍も融資を増やすなんて、まるでむちゃである。国有商業銀行はどうやって実行したのか。

 中国人民銀行統計から国有商業銀行の資金運用を調べてみると、09年12月末の融資残高のうち67%を占めるのは中長期融資で、前年比で4・6倍も増えた。国有企業はこの融資を受けて、株式や不動産投資に邁進(まいしん)できる。商業銀行は、貸し出しとは別に有価証券投資を行っている。

 この残高は前年比5・3倍、増加額は7兆5千億元に達する。貸出増加額の3分の2に相当する。商業銀行は直接、株式など証券投資に出動しているわけである。

 銀行総資産に占める有価証券投資残高は、前年の19%から一挙に約3割に膨らんだ。こうみると、中国の商業銀行は銀行というよりも投資ファンドに近い。あるいは投資ファンド部門を持つ総合金融機関とでも言うべきか。融資を受けた国有企業はそこで安心して株や不動産に投資し、値上がり益を得ていく。

 ≪人民元流し込む壮大な賭け≫

 党中央は、株価テコ入れのためにかつてない規模で人民元を株式市場に流し込んだ。壮大な賭けである。株式が再び暴落するようになれば、中国の金融パワーを担う国有商業銀行の信用も、株の持ち合いをしている国有企業の資産も大きく損なわれるが、それだけでは済まない。

 ニューヨークも東京もロンドンもサンパウロも、株価は上海の道連れにされる恐れが強いのだ。


 

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転回する日米中三角形

2010/02/08 11:47

 

StartFragment

SANKEI EXPRESS 2月7日付け、田村秀男の国際政治経済学入門第117回から

 一年前には「G2」とまで言われた米中関係は今や、中国古代の思想家、荘子の警句、「合即離、成即毀」(ぴったり合ったらすぐに離反するし、成ったらすぐに毀れる)通りだ。日米中の三角関係はそこで大きく転回する。

 09年9月に就任した鳩山由紀夫首相は米国抜きの「東アジア共同体構想」を中国共産党指導部に持ちかけた。沖縄の米軍普天間基地の移設問題をめぐる鳩山政権の対応を含め、日本側は戦後一貫して続いてきた対米追従路線の大転換を試み始めた。すると、オバマ政権は対中政策を修正し始めたわけで、「三国志」のドラマのようだ。三角関係の転換点は未曾有の金融危機、08年9月の「リーマン・ショック」である。

 中国は金融危機をまさに天佑ととらえた。中国は米国が巨額のドル札と国債を発行するのに乗じて、自身も人民元の大量発行に踏み切り、米国債を買い取って米金融市場の安定に協調する一方で、国有商業銀行が一挙に融資額を三倍に増やし、国有企業による投資をテコ入れしてきた。この結果、中国は年率8%以上の実質経済成長を達成する一方、不動産と株式市場を急速に回復させている。北京は人民元をドルに固定することで、輸出と外資導入を安定させるばかりか、人民元による貿易決済を周辺アジア地域に広める戦略まで展開している。中国は基軸通貨ドルにぴったりと貼り付くことで2010年には中国の名目国内総生産GDP)は日本を抜き、世界第2位の経済大国の座に就く。

 オバマ政権は発足当時は中国の危機対策を称揚し、昨年2月に訪中したクリントン国務長官は「世界経済危機への対応に向けた努力が損なわれるから、訪中の間、人権やチベットといった問題には重点を置かない」と公言する始末だった。米国側が下手に出る「G2」関係が始まった。

 ところが、「中国人というのは1インチ引けば2インチも前に出てくる」(共和党系の中国専門家)。中国側はその通り、かさにかかって米国に対して傲慢と受け取れる態度を示すようになった。「人権」は完全に無視、核疑惑のイランと日米欧の不和に乗じて油田利権を獲得し、オバマ政権が意気込んだ温室効果ガス削減提案には空疎な数値で対応する始末だ。何よりも、豊富な外貨準備を背景に軍拡を加速させている。ワシントンの我慢は限界にきた。

 1月12日、米インターネット検索サービス最大手グーグルはネット検閲と妨害が激しい中国からの全面撤退も辞さないと宣言した。オバマ政権も議会も呼応して、ネット検閲を非難し始めた。グーグルは同じ米国のライバル大手の「ヤフー」に比べて中国への投資規模は小さい。グーグルなら強硬姿勢を貫ける、と米政府筋はみる。

 グーグルで堰をを切ったように、ワシントンは攻勢に出た。台湾への武器売却承認、ダライ・ラマとオバマ大統領の会談設定などだ。

 米国の対日姿勢はどうか。普天間問題では昨年12月までは鳩山政権に露骨なまでに不快感と怒りを見せていた米政府高官が、トーンを和らげている。オバマ政権周辺ではジョセフ・ナイ・ハーバード大名誉教授が、1月7日付の米紙への寄稿で、普天間飛行場移設で日本政府に強硬姿勢で臨むことは「賢明でない」とし、「忍耐強く戦略的に臨まなければならない」と提言した。共和党側でも、ナイ教授と親しいアーミテージ元国務副長官が辺野古以外の可能性を言及するようになった。対日強硬策は米国の国益にならないというわけだが、日本の「離米」と増長する「大国中国」への接近を警戒するワシントンのあせりがかいま見える。

 筆者は来日した米通商代表部(USTR)のD・マランティス副代表に、鳩山首相の東アジア共同体構想について聞いたら、「米国はアジア太平洋の枠組みを最重視している。日本と協力関係を深めたい」と答えた。「これから中国に足を伸ばすのか」と聞いたら、「行かない。マレーシアに行く」。北京の途中に東京に立ち寄るのが恒例だった米政府高官のルートも変わってきたようだ。

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ウォール街という世界の株式バブルの胴元

2010/01/31 09:00

 

 【日曜経済講座】編集委員・田村秀男 オバマの“強欲”規制

平成22年 (2010) 1月31日[日]産経新聞朝刊から 


 

 

 

 ■新興国市場の命運左右

 米国オバマ大統領が強欲なウォール街に向かって金融規制の鉄槌(てっつい)を振りかざすと、世界的な株価回復の先頭を走ってきた新興国の市場に激震が走った。なぜか。

 米国は国際金融の元締め、世界的な株式市場の胴元である。自国の国際収支赤字を穴埋めして有り余る巨額マネーを世界に再配分してきた。活気あふれる新興国といえども、胴元から自立することはできない。

 ≪米国株価に連動する≫

 グラフをみると、米株価は米国への資本流入(「外国の対米投資」)と米国の対外投資が増加基調にあるときに上昇し、逆にその双方が急激に縮小するとき、暴落している。新興国株価は、米国株に連動する。

 2008年9月の「リーマン・ショック」で、胴元はジリ貧に陥った。08年、外国の対米投資は07年の2兆1300億ドルの4分の1近くに減った。米国の対外投資は、1兆4700億ドルからわずか1億ドル余りとほぼ消えた。07年10月のピーク時から09年2月にかけて米株価は半値に、代表的な新興国株価指数であるMSCI新興国指数は63%も落ち込んだ。

 外国の対米投資と米国の対外投資は09年後半から回復し、09年第3四半期には年率換算でそれぞれ1兆3400億ドル、1兆2千億ドルと急増した。09年末、米株価と新興国株価は同年2月に比べて、それぞれ48%、98%も跳ね上がった。新興国株価を先導するのは、胴元の米国金融市場なのである。

 新興国を代表するブラジルロシアインド中国のBRICs(ブリックス)の用語を発明したのは証券大手ゴールドマン・サックスの20歳代の女性社員で、03年10月に初めて使用した。そのころからウォール街は住宅ローンを証券化した金融商品、さらにそこから派生した保険商品(デリバティブ)を大量発行し、世界の資金を集めては重点的に再配分しBRICs株式ブームを演出した。

 金融危機は米国製の世界株式市場のビジネス・モデルの崩壊を引き起した。世界の余剰資金は米国から逃げ出し、米国の対外投資原資が底を付いた。

 ≪再配分マネー急回復≫

 新興国では09年の中国のように思い切った金融緩和と財政支出による内需拡大策が実行され、株式、不動産市場にも自前のマネーが流れ込んだ。そうした内部要因も大きいが、新興国市場の本格的な回復と安定感をもたらしているのは、米国からの再配分マネーの急回復である。つまり、09年第3四半期には米国中心の株価モデルがかなり機能を取り戻したといえるだろう。

 ニューヨーク金融市場は欧州ユーロ圏を含む世界のどの市場より流動性(売り買いの自由度)が高く、金融商品の種類も多岐に渡っている。ユーロ圏の大手年金ファンドも、主力の運用部隊はウォール街に軒を連ねている。資産運用の計算通貨はドルであり、大半の金融取引はドルで始まりドルで終わる。こうした基軸通貨ドル金融のシステムは戦後の長い間に整備されており、「100年に1度の大津波」に急襲されても、土台から崩れることはなかった。

 ≪金融バブル再燃の懸念≫

 世界の株式や金融市場の安定の鍵は、外国から米国への資本流入と米国からの対外投資の増勢基調が定着するかどうかである。波乱要因は、金融バブル再燃の懸念だ。米連邦準備制度理事会FRB)は平時の2倍のドルを発行し、不良金融資産を買い上げるなど、総額で1千兆円以上の公的資金を市場に流し込んできた。

 金融機関が野放図に信用を膨張させないよう警戒するオバマ政権だが、性急な胴元の締めつけは世界的な波乱を引き起す。日銀の金融無策でひどくなるばかりの国内市場の不振を補うため、新興国向け投資に傾斜しなければならない年金基金など日本の投資家にとっても、正念場である。

 

 




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内閣府中期予測モデルの欠陥と鳩山首相

2010/01/27 13:47

 

 

【視点】産経新聞編集委員・田村秀男 内閣府中期予測モデルの欠陥と鳩山首相

2010.1.26 05:00

 ■財政支出の経済効果を見誤るな

 本紙や産経新聞を通じて、1年前から「脱デフレ」の論陣を張ってきた。手応えを感じるようになったのはつい最近だが、何といっても鍵は鳩山由紀夫首相が握っている。そこで年始早々、民間有志の政策提言グループの一員として官邸に招かれた際、経済予測モデルの権威である宍戸駿太郎筑波大学名誉教授と共同で、首相に具体案を提案した。提言は政治主導の流れを考慮して2つの柱に集約した。

 最初の柱は、政府と日銀が年1~2%の国内総生産GDP)総合物価指数(デフレーター)を年率1~2%の伸びとする合同の目標を設定する。このインフレ目標達成のために、政府と日銀は財政と金融の両輪をフル稼働させる。日銀は、政府の新成長戦略に呼応して市場からの国債(政府短期証券を含む)を買い切り、脱デフレおよびインフレ目標の達成まで量的緩和政策を続ける。

 日銀は長期国債の保有上限を日銀券発行残高以内とする「内規」を持っている。この上限を撤廃しない限り、日銀による市場からの長期国債買い取り規模はあと30兆円にも満たないが、別の方法がある。日銀は長期国債と政府短期証券(FB)買い切りの組み合わせで無理なく、100兆円の財源を確保できる。

 一種の短期国債であるFBの発行残高は100兆円余りに上る。FBは外国為替市場での円売り・ドル買い介入のため、発行されてきた。金融機関から預金を吸い上げ、主として米国債で運用している。日銀はこのFBを買い上げるだけで、市中金融機関に最大で100兆円程度資金供給できる。政府はそこで建設国債を最大100兆円発行し、金融機関から100兆円分を吸い上げる。

 民間の貯蓄をFB経由で米国債に転換してきたこれまでのやり方をやめ、民間の貯蓄の代わりに日銀がFBを保有するわけだ。平たく言うと、貴重な日本国民の貯蓄を米国債で運用せず、日本の経済再生のために使うわけで、至極妥当な民間貯蓄活用策である。

 日本の公的純債務残高は2008年でGDPの87%に上るが、同時に世界最大の純債権国であり、日銀の協調次第でこの債権部分を活用できる。しかも、政府は通常通り米国債を外貨準備資産として保有し続ければよく、売却する必要は全くない。

 首相は当提言グループと菅直人副総理兼財務相ら関係省庁政務三役の意見調整を進めると約束した。鳩山政権がいくら「新成長戦略」を口にしたところで、財源の裏付けがなければ画餅(がべい)に過ぎない。首相の責任として、政局の如何(いかん)にかかわらず、粛々と日本の国難であるデフレ不況を解決する決意を示し、解決策を実行してほしいものだが、ちょっと頼りないとの印象をぬぐい切れない。

 ただ一つ、首相の目がギラッと光ったと感じた場面もあった。

 宍戸教授が政府の経済インテリジェンスである内閣府の中期予測モデルの欠陥を指摘すると、ただちに調査を約束したのである。内閣府モデルは財務官僚の差し金で、財政支出による景気刺激効果を極端に低く見積もった「小泉・竹中」時代の置き土産で、政策ミスリードの根源である。宍戸教授は自公政権時代からこの欠陥を内閣府エコノミスト相手に衝いてきたが、内閣府は逃げに終始してきた。

                   ◇

 政府の財政効果予測計算が誤ったパラメーターを前提にしているなら、的確な脱デフレ政策なぞ望めない。首相も菅副総理兼財務相もこの内閣府官僚エコノミストを総入れ替えするだけでも大仕事だが、彼らの背後には財務官僚がいる。財務省消費税増税や公共投資削減など緊縮財政に踏み切っても、景気への悪影響やデフレの加速にはつながらないという予測を内閣府にさせてきた。財務官僚はとにかく、中期モデルを温存し、事業仕分けなどによる歳出削減を菅財務相に徹底的に実行させたいところだろう。理数脳の鳩山首相はまずはこの欺瞞(ぎまん)を見抜き、ばっさりとチェンジしてもらいたい。

 

 

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ドル基軸体制は不変

2010/01/25 16:13

 

【国際政治経済学入門】ドル基軸体制はよみがえる

2010/01/25 14:13

「リーマン・ショック」後は「ドル崩壊」を仰々しく論じる評論が後を絶たないが、あえて言う。「ドル基軸体制はよみがえる」と。

覇権争いはまだ始まったばかりなのだ。現実を直視しない夢想のドラマをいくら見ても、判断を誤るだけだ。

 

 グラフは米国の国際収支と米株式相場の代表的指数であるダウ・ジョーンズ工業平均株価を対比している。米株価は米国への資本流入(「外国の対米投資」)と米国の対外投資が増加基調にあるときに上昇し、逆にその双方が急激に縮小するときに暴落している。
金融危機が起きた2008年には外国の対米投資が07年の2兆1300億ドルから5300億ドルへと4分の1近くまで減った。米国の対外投資は1兆4700億ドルからわずか1億ドル余りとじり貧になった。株価は1万3264ドルから8776ドルへと3分の1も下落した。一転して昨年第3四半期以来、めざましく回復してきた。第3四半期には外国の対米投資は年率換算で1兆3400億ドルに、米国の対外投資は1兆2000億ドル余りと急増している。

■投資マネーの胴元

中国インドロシアブラジルなど新興国株式の基調は米国株価と連動している。この理由は新興国景気の急速な回復にあると論じる向きが多いが、株式を動かすマネーは米国からきている。米国は危機後も危機前と同じく、世界の投資マネーの胴元である。

米国は莫大(ばくだい)な経常収支赤字を抱える世界最大の債務国なのだが、その赤字を大きく超えるマネーを世界からかき集めている。

とくに、住宅ブームと住宅ローンを証券化した金融商品、さらにそこから派生した保険商品(デリバティブ)が2003年あたりから大量発行され、世界の余剰マネーが米国になだれ込んできた。ニューヨーク・ウォール街は経常収支の赤字を補って余りある世界の資金を新興国の株式市場に再配分し、新興国株式がブームになったわけである。

例えば、BRICs(ブリックス)とは、新興国を代表するブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の頭文字を合わせた名称だが、この用語を発明したのはゴールドマン・サックスの20代の女性社員で、2003年10月に書いた投資家向けのリポートの表題で初めて使用した。ウォール街はこの名称に飛びつき、ウォール街発で新興国株を押し上げた。

金融危機は米国基軸の世界株式市場のビジネス・モデルの崩壊を引き起こした。米国株が売られ、世界の余剰資金は米国から逃げ出し、米国からの対外投資が底を付いた。

その後、中国のように思い切った金融緩和と財政支出による内需拡大策による内部発生的な株価上昇がないわけではないが、本格的に新興国市場一般が回復する安定感をもたらしているのは米国からの再配分マネーの急速な回復である。つまり、昨年第3四半期は米国中心の株価ビジネス・モデルがかなり機能を取り戻したと言えるだろう。

■金融取引の物差し

米国はなぜ世界の株式市場の主力エンジンであり続けるのか。ドルが世界の基軸通貨であるからだ。ドルは世界の貿易、商品、資本取引の決済通貨であるばかりではない。世界の金融取引の物差しである。米国債は依然として世界の金融市場の目安である。ニューヨーク金融市場は欧州ユーロ圏を含む世界のどの金融市場よりも流動性(売り買いと現金化の自由度)が高く、種類も多岐に渡っている。ユーロ圏の大手年金ファンドも主力の運用部隊はウォール街に軒を連ねている。大半の金融取引はドルで始まりドルで終わる。こうしたドル金融のシステムは戦後の長い間に整備されており、リーマン・ショックのような100年に一度の大津波を受けても、土台から崩れることはなかった。

今後の世界の株式や金融市場動向の鍵は、ドル基軸のビジネスモデルが順調に再生するかどうかにある。回復度は米国への外国からの資本流入と米国からの対外投資の増勢基調でうかがえる。唯一、波乱要因はインフレと金利急騰だが、米国はドル札を平時の2倍に増やし、財政赤字を一挙に3倍に膨らませても、インフレ懸念は起きていない。基軸通貨ドルはやはり強靭(きょうじん)なのだろう。
(特別記者・編集委員 田村秀男/
SANKEI EXPRESS

 

 

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