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米住宅金融バブル、影の救済相手は中国

2008/09/14 08:00

 

SANKEI EXPRESS 国際政治経済学入門76

米住宅金融バブル、影の救済相手は中国

 

 大型金融機関の経営破綻には、必ず救済される者と見捨てられる者との明暗に分かれる。90年代の日本の大手金融機関経営破綻の場合、預金者は保護され、株主と従業員が犠牲になり、経営者は号泣した。
「史上最大の金融機関救済劇」と称される米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と、連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の米政府系住宅金融2社の場合、救済の恩恵をもっとも受けるのは驚くことなかれ、中国を筆頭とする米政府機関債の投資家であり、被害者は米国人を中心とする2社の株主である。
ブッシュ政権はなぜそこまで追い込まれたのか。
理由は、米国の金融市場が中国などから入ってくる余剰マネーに依存しており、ファニーメイなどの債券を中国が売却し、新たに買わないと言い出せば、米金融市場は一挙に崩壊しかねないからだ。
財務省統計から推計すると、中国政府はこの6月末時点で約6500億ドルの米政府機関債を保有しており、世界断トツの投資家である。第2位の日本2600億ドルを大きく上回る。豊富な石油収入を持つ中東産油国は240億ドルに過ぎない。
米政府が住宅金融2社に公的資金を投入しなければどうなるか。2社が米住宅ローンの半分を引き受け発行済みの住宅抵当債券は5兆2000億ドル、米国債の3割相当の社債1兆6000億ドルは暴落し、住宅ローン金利は急騰、住宅市場は壊滅しよう。
そればかりではない。2社は市場から調達する資金の金利の変動に備えて「金利スワップ」など、複雑な金融派生商品(デリバティブ)取引を行っている。米銀行大手は住宅金融2社との金利スワップ取引を中心にデリバティブを膨らませてきた。米銀のデリバティブ契約残高はことし3月末で180兆ドルを超え、そのうち金利関連は80%、142兆ドルで米国内総生産GDP)の10倍にも達する。住宅金融2社の住宅債券相場が崩れると、デリバティブ市場は潰え、米銀は軒並み経営破綻、米金融市場が根底から壊れる。「デリバティブ大量破壊兵器」と全米最大の個人投資家W・バフェット氏のかねてからの警告通りになってしまう。
ブッシュ政権はこうして住宅金融2社の債券の暴落をどうしても食い止めるせっぱ詰まった事情があった。
北京はこうしたワシントンの窮状に理解を示し、損失を恐れたアラブ産油国や日欧の投資家が住宅抵当証券を売り逃げるのとは逆に、グラフが示しように買い増ししていた。8月の北京五輪を成功させるため北京としてはワシントンに金融面での「誠意」を示し、ブッシュ米大統領の開会式出席を実現する政治的動機もあった。
局面は五輪終了とともに一挙に変わった。中国の国有商業銀行を代表する中国銀行は28日、米住宅金融2社の発行債券を約40億米ドル減らしたと発表した。このニュースに米金融市場の動揺が始まった。中国銀行の住宅債券保有分75億ドルはそれでも中国人民銀行など中国政府の保有額に比べるとはるかに小さい。だが、中国銀行も党の政治的支配下にあり、中国銀行の発表は北京の党中央の警告のシグナルとワシントンは受け取ったに違いない。
ポールソン財務長官を中心に特別作業班が発足し、急ぎ住宅金融2社への公的資金注入の具体策の検討に着手し、9月7日の日曜に緊急発表した。発表前に、マコーマック財務次官(国際担当)は真っ先に北京の周小川人民銀行総裁に電話し、「住宅2社の債券を政府は買い支える安定策をまとめたので、安心して欲しい」と説明した。同次官は中東産油国政府系ファンド、さらに日欧の当局にも連絡した。ワシントンの発表を受けて、中国人民銀行はただちに声明を発表し「この政策は前向きで市場を安定させ確信を高める」と歓迎した。
もとより、米金融市場が崩壊し、中国政府が保有する1兆数千億ドルの資産が紙くずになれば、胡錦濤総書記ら党中央の責任問題に発展しよう。従って、北京としてはワシントンに協力せざるをえない。
だが、ドラマはまだ続く。
今回の住宅金融救済策は、中国などの投資家を優遇し、米国の株主を犠牲にしているからだ。2社を米政府の直接管理下に置き、債券を買い支える。さらにファニーメイ、フレディマック各社に1000億ドルの優先株購入枠を設定、経営状況に応じ段階的に公的資金を注入するが、これまで発行された普通株への配当は後回しになるために株価の暴落は避けられない。広範囲の米国民が株主になっているため、今後政治問題化する恐れもあり、優先株の発行などっ救済策の実行は次期政権の手にゆだねられている。
北京はこうしたワシントンの政治状況をにらみながら、米住宅債券の購入を続けるかどうか、場合によっては再び揺さぶりをかけるだろう。

カテゴリ: マネー・経済  > 金融    フォルダ: 田村秀男の国際政治経済学入門

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コメント(1)

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2008/09/18 10:38

Commented by urara225 さん

中国アメリカ政府機関債を大量に買い支えていることについて、北京五輪の成功工作やアメリカ向けの輸出で大儲けしている構造から、驚きはありませんでしたが、中東の少なさと、安倍政権時の少なさは新鮮な驚きでした。

安倍政権では価値観外交を掲げ、小泉政権に続き日米蜜月路線にみえましたが、売り越しが目に付きます。冷たい関係に見えた福田政権時の方がよほど買い支えていますね。

 
 
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