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いくらドル札刷っても足りない米金融危機

2008/10/05 00:54

 

米国はこの9月一ヶ月だけで、もう一年分以上のドル札を増刷したことをご存知だろうか。

いくら供給しても「まだ足りない、助けて、振り込んで」という電話が米連邦準備制度理事会FRB)にはひっきりなしにかかってくる。振り込め詐欺のことではない。

米国ばかりではない。英国アイルランドフランスドイツ、ルクセンブルグなど欧州からもかかってくる。日本でもその恐れが強い。そこで、米欧日の中央銀行が協調して、ドル資金を流す取り決めもした。
なぜ国際的に市場ではドル資金不足が続くのか。金融商品バブルが崩壊したためで、歴史的には前代未聞である。

それは金融のグローバル化によりドル建ての金融商品が世界に出回っている。それらの金融商品の多くがサブプライム関連の証券化商品で、その値打ちが下がっている。金融機関の資産は大きく目減りする一方、清算してドルの現金に替えなければならないが、手元にドルがない。金融商品を叩き売れば、同種の金融商品を中心に投げ売りが連鎖してしまう。欧州では特にそれがひどい。とりあえずは、資金が金融機関の手元にふんだんにあり、融通し合えるという通常の姿に近づけるしかない。
いくら国際協調してもドル札はFRBでなければ刷れないから、FRBへのドル資金需要は高まるばかりだ。皮肉なことに

ドル資金は不足しているのだから、ドルが今のところ暴落するはずはない。ドルは見かけ上、まだ強い。FRBは金融機関から米国債を買い上げては刷ったドルを供給するのだから、米国債相場は堅調なのだが、それは台風の目の中にいるようなものだ。サブプライム危機がおきた昨年8月以降ことし6月までのドル資金供給で生み出された余剰ドルは原油・穀物先物市場になだれ込んだ。輸入国は高騰したドル建ての原油、穀物をドルで払わなければならないので、ドル需要が高まり、ドル相場は強含んだ。

垂れ流され続ける通貨の価値をだれが信じようか。

それもまた、歴史的には超インフレ、通貨暴落というあまたの事例がある。

FRBのデータをみると、ドル資金追加供給量はすさまじい。10月1日時点でのFRBの融資などによる資金供給残高は1兆5331億2800万ドルで、住宅公社、リーマン危機の始まる前の8月28日時点の9437億2500万ドルに比べて、5894億ドル、64%増。前年同期比で5271億ドル増だから、この一ヶ月余りで一年分をはるかに上回るドル資金を刷っては市場にしたことになる。
では、この資金はきちんと市場で回り、金融不安を和らげているか、というと疑問符が付く。
ここにもう一つのFRBデータがある。9月24日時点で、FRBが市中銀行に貸した資金のうち4分の1強は市場で使われず、FRBでの市中銀行の口座に戻っているのだ。資金は消えたわけではないのだが、ドル資金不足に悩む金融機関に回らない。理由ははっきりしている。
金融機関がすっかり疑心暗鬼になってしまい、いくらFRBからドル資金が提供されても、焦げ付きを恐れておいそれと他の金融機関に融通しないからだ。
結局、根本問題は腐った資産を抱えた金融機関の財務にあるわけだ。そこで、ブッシュ政権は7000億ドルに上る財政資金を使って不良金融資産を買い上げることにしたが、大統領選挙と同時の議会(下院は全員、上院は3分の1)総選挙を控え、「ウォール街の強欲どもを救済するなんて」という有権者の声に押されて議員たちが浮き足立っている。
この救済法案(「金融安定化法案」)が成立しても、さらに難題が待ちかまえている。というのは米政府自体巨額の財政赤字を抱えている。赤字国債を発行して資金を調達するしかないが、一体だれがその国債を引き受けるのか。
ここでもFRBが最終的に買い上げればよいと簡単に言っても、FRBはいい加減、経営不安にある証券会社など金融機関に救済融資している。さらに市場経由とは言え国債を引き受けたら、中央銀行としての信頼が揺らぐのは必至だ。
最後の貸し手を助ける究極の「最後の貸し手」が必要になる。それはだれか。黒字国の日本か、というと、かつてと違い郵貯も民営化が進み、政府の意向でおしそれと米国債投資というわけにいかない。民間の銀行や生保も下落するドルの資産に投資するわけにいかない。

カテゴリ: マネー・経済  > 金融    フォルダ: 田村秀男の国際政治経済学入門

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コメント(6)

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2008/10/05 02:07

Commented by korikutu さん

どうなるのか。日欧中オペック、みんなで米債権を売ったら。
ドルは即終わり。国際経済破綻。やめちくれー。なので、できない。

じゃー、次の米債権だれが買うんだ。更に膨れる。
そうなると国際協調しかないんじゃないのかな。
どうしようもない。日本だけでなく、ユーロ圏、オペック、中国も買うしかないよね。10-30年後に利息だけでも帰ってくるあてもないんだけど。
世界経済が暗黒になるのは困るってことで、アメリカは開き直ってるのだけど。

現時点で、日本、ユーロ圏、オペック、中国に対し、はっきり支援を求め、軟着陸できた場合、感謝の意を表すべきだ。感謝の意以外に、なにも出せないだろうから。

ハードランディングは考えたくない。恐ろしい。

田村
ほかに、シナリオあるでしょうか?

 
 

2008/10/05 20:25

Commented by unimaro さん

お邪魔いたします。
素人考えですみません。

普通、それだけばんばん気前よくお金発行したら大暴落ですよねぇ、、
ずいぶん米は得したわけになりますねー、

その米の中でも(米だけというわけではないですね)、誰がいったい一番得しているのでしょうか?

ちょっとゲスいけど、気になります。

 
 

2008/10/05 22:00

Commented by - さん

田村秀男さん
こんばんは、お久しぶりです、登録しました、コメントしたくてです。わーーーーー。難しいです、読んでも理解できませんが、50過ぎの勉強です。よろしくお願いいたします。

 
 

2008/10/06 13:09

Commented by iza-ryusoo さん

田村さま
>最後の貸し手を助ける究極の「最後の貸し手」が必要になる。それはだれか。<

 日本の事例を挙げて、それはおいそれと、となると。結局は中国の登場しか無いという見方への、貴台のコメントを欲しいのですが。

 
 

2008/10/06 17:37

Commented by 田村秀男 さん

To iza-ryusooさん
>田村さま
> 日本の事例を挙げて、それはおいそれと、となると。結局は中国の登場しか無いという見方への、貴台のコメントを欲しいのですが。
すでに書いていますが、ポイントだけ
米は7000億ドル公的資金の財源は主として米国債が新規発行。ところが、米国の新規国債発行はネットで年間5000億ドル。公的資金重要はそれをはるかに上回ります。
米国内の民間直接引き受け、さらにFRBの間接引き受けには限度があります。
中国は半年で2800億ドルの外貨準備を積み上げています。これらだけのニューマネーを動かせる国家、政府機関は中国以外ありません。
中東産油国ももちろん、オイルマネーがありますが、利回り重視であてになりません。
日本の民間は預金者を損させるわけにいきません。外貨準備は横ばい。したがって余力に乏しい。
でも中国だって、ドル債が紙切れになるのは恐い。結局、中国の参加を促すためには、国際的なドル債債権国会議を開き、足並みをそろえることが重要でしょう。これにヤンキー魂が耐えられるかどうかわかりませんが、背に腹は代えられません。

 
 

2008/10/06 20:40

Commented by iza-ryusoo さん

To 田村秀男さん
>To iza-ryusooさん
>でも中国だって、ドル債が紙切れになるのは恐い。結局、中国の参加を促すためには、国際的なドル債債権国会議を開き、足並みをそろえることが重要でしょう。これにヤンキー魂が耐えられるかどうかわかりませんが、背に腹は代えられません。<

 ご教示ありがたく拝受。
「背に腹は代えられません」に帰結するのでは。

 
 
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2008/10/05 23:44

ドルの価値がいまだに下がらないことの意味について [酔うぞの万華鏡]

 

田村秀男記者のイザブログの記事 「いくらドル札刷っても足りない米金融危機」 はここまでズバッと書いている記事がほとんど無い状態で、非常に光っていると感じるのだが、ここらヘンまで来るとわたしにはよく分から…